土日・祝日も診療。午後8時まで受付で安心。加賀野消化器内科・内科クリニック

2012年04月30日

幻のトンカツ!!

皆さんが想像するトンカツの厚さはどの位ですか?

衣と合わせて5mm位の紙カツ?
大体2〜3cmのロースカツ?
それともコロッと丸い3〜4cmのヒレカツ?

特大カツと銘打って、でかい皿から更にはみ出すような巨大な面積を誇るトンカツを出すお店はあっても、10cmを越える分厚いトンカツを出すお店を知っていますか?

私はそうした分厚いカツを出すお店を3軒だけ知っています。
一軒は東京の上野に、もう一軒は私の住む盛岡より更に北の烏賊で有名な町、八戸に。
そして、とびっきりのおよそ15cmに及ぶ厚さを誇るお店がかつて盛岡にもあったのです。

そう、かつて・・・の言葉通り、すでにそれらのお店達は消えてしまっています。
その盛岡にあったお店の名は、「シャトー・ディケム」と名乗っていました。

背油を落とした豚のロース肉の芯の部分を、そのままの形で約500g相当に切出して、それを丸ごとトンカツに仕立てるという大業を持った店でした。
500gの超特大カツと言うだけなら他のお店でもお目に掛かれそうな気がするのですが、普通のお店ならその肉を叩きに叩きまくって平べったい、揚げ鍋一杯に広がるカツを揚げてしまうものです。
しかし、ディケムのご主人は違いました。
むしろ肉の表面積が出来るだけ小さくなるように、まるで一塊りの煉瓦のように四角く固めてそれを丸ごと揚げるのです。

そんな塊の肉を揚げると、表面だけガリガリと真っ黒に焦げて、芯はまるで火が通らない生のままになってしまうのが普通なのですが、表面はさっくりきつね色に揚がっていて、芯にほんのりピンク色をした熱々の肉汁がたっぷり貯まった絶妙の揚げ具合で出してくるのですからビックリです。

皿の上にでんと置かれた500gに及ぶ肉の塊の迫力は絶大で、初めてそれを目の当たりにした女性軍などは、一目見みるなり「えーーーこんなに食べられる訳がない!!」と言う悲鳴を上げ、それなりに食べられる男性軍もちょっと鼻白むほどの代物です。

しかし、肉のおいしさは、その中に閉じこめられた肉汁の量でほぼ決まってしまいます。
同じ肉を使って焼いたステーキでも、薄く焼いた物より厚く焼いた物の方を美味しく感じるのはその為なのですが、肉の幅と厚さが等しく15cmに及ぶカツにナイフを入れた時に切り口より溢れるたっぷりした肉汁、噛み締める肉の柔らかさ、豚肉とはこれ程旨い物なのかと目から鱗物の旨さでした。
たかがトンカツなのに、ちょっとしたレストランで食べる3〜4千円程度のステーキなんか目じゃない程の旨さなので、500gもの肉を平らげるのに普通の男性なら15分も掛からないと言う有様。
まさに耳をすぼめて食べるという表現がまさにぴったり。
初めは及び腰だった女性軍でも、一枚のカツに二人で掛かればペロリと平らげてしまって、ちょっと物足りなそうにしていた物です。

お店自身は実にさもないお店でしたが、出す品一つ一つに目と舌を驚かされ、誰を連れていっても食事を終えて帰るときには、はち切れそうなお腹を抱えて、それにも勝る驚きと満足感を味わえるお店でした。

しかしここのご主人が、若い頃よりの大酒豪だったことが災いし、肝硬変から来る食道静脈瘤破裂のため大出血を起こしてダウンしてしまい、そのご主人がたった一人で切り盛りしていたお店で、味を嗣ぐ後継者がいなかったため、15年ほど前にあえなく閉店となり、そのトンカツは今や幻となってしまいました。

そのご主人と大の常連客で健康相談の相手もしていた私は、店を閉めて自宅での静養生活をしている間にも、時に行き来をするをする関係だったりしたものですから、2-3回、せがんで私の家で「幻のトンカツ」の実演をしてもらったことがあり、そのトンカツの作り方を目の当たりにしたのですが、簡単な家庭料理というわけではない、手間と暇が込められた一品だったんだなとつくづく感心したものです。
残念ながら、ご主人が他界されてもう10年ほどにもなり、記憶の中にだけある幻の味となってしまいました。(ああ、今でも思い出しただけでよだれが止まらなくなってしまう・・・)

このお店の想い出話をすると切りが無いですが、今日は此処まで。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日本人の平均的な男性の場合、一生の内に純粋アルコール量で1000Kg呑むと肝硬変に成れるそうです。
1000Kgと言うと多そうに思いますが、20から60までの40年間毎日呑むとすると、一日あたり日本酒でわずかに2.5合相当になります。
女性の場合、およそその2/3程度で十分とのことです。
お酒がないと眠れないと仰るそこのあなた、十分お気をつけ下さいませ!!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
posted by shirokuma at 11:03| Comment(1) | 食べ歩き
この記事へのコメント
40代の女性、東京出身、現在は海外在住です。
昭和60年前後、父親の仕事の都合で盛岡市に3年間住んでいました。

両親ともに食道楽だったので、「シャトー・ディケム」も家族で何回か行き、
長い調理時間をじりじりと待った後、運ばれてきた一皿を、歓声と共に食べていました。
私はあの味を超えるトンカツに、今まで出会えておりません。

懐かしくなってコメントしてしまいました。
お店のその後も知れてうれしかったです。ありがとうございました。
Posted by もえこ at 2019年05月08日 09:39
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。